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薬学部ストレート合格率とは?大学別一覧と分析【文部科学省2025年度調査データ】

#薬剤師国家試験

薬学部の「新卒合格率」だけを見て大学を比較していませんか?

新卒合格率は、その年に卒業できた学生のうち何割が国家試験に合格したかを示す数値です。
しかし、途中で留年・退学した学生は分母に含まれません
つまり、入学した学生のうち何人が6年間ストレートで国家試験に合格したかを示す「ストレート合格率」を見なければ、大学の教育力は正しく評価できないのです。

この記事では、文部科学省「薬学部における修学状況等」2025年度調査結果(2026年1月19日更新版)のデータをもとに、2019年度入学者のストレート合格率を大学別に分析します。

薬学部への進学を検討している高校生・保護者の方、そして薬学教育に携わるすべての方に向けて、公式データに基づく客観的な分析をお届けします。

💡 この記事で扱うデータについて 
本記事のストレート合格率は、2019年度に入学した学生第110回薬剤師国家試験(2025年2月実施)において合格した割合です。
第111回国家試験(2026年2月実施)の結果を反映した2020年度入学者のストレート合格率は、2026年秋以降に文部科学省が公表する予定です。

第111回薬剤師国家試験の合格発表速報は、以下の関連記事をご覧ください。

関連記事:

「ストレート合格率」とは何か──3つの合格率の違い

新卒合格率・出願対比合格率・ストレート合格率

薬学部の実力を測る指標には、大きく3つの「合格率」があります。

① 新卒合格率(厚生労働省発表) 
その年に卒業した学生のうち、国家試験に合格した割合。
留年を経て卒業した学生も分母に含むため、「卒業制限」で国試に受かりそうにない学生を卒業させなければ数値が高く出る構造があります。

② 出願対比合格率(メディセレ独自分析) 
国家試験に出願した全学生(新卒+既卒)のうち、合格した割合。
前回の速報記事で分析した指標です。新卒合格率より広い分母を取ることで、大学の『出口管理(卒業延期)』に加え、出願後の『直前の受験辞退(未受験)』の影響までも可視化できる、極めて実態に近い指標です。

③ ストレート合格率(本記事の分析対象) 
ある年度に入学した学生が、一度も留年・休学せず6年間で卒業し、国家試験に合格した割合。
入学時の全学生を分母に取るため、途中の留年・退学も含めた大学の教育力を最も正確に反映します。

ストレート合格率(%)= 標準修業年限内の国試合格者数 ÷ 入学時の在籍者数 × 100

メディセレでは、この3つの指標を組み合わせることで、新卒合格率だけでは見えない大学間の実力差を多角的に分析しています。

データソースと注意点

出典: 文部科学省「薬学部における修学状況等 2025年(令和7年)度調査結果」(2025年5月1日現在、2026年1月19日更新版) https://www.mext.go.jp/a_menu/01_d/1361518.htm

対象: 2019年度に薬学部6年制課程に入学した学生(75校) 
基準: 第110回薬剤師国家試験(2025年2月実施)までの合格状況

⚠ データ解釈上の注意点

  • 東京大学・北海道大学・金沢大学・京都大学は入学後に学科振り分けを行うため、「入学時」の人数は振り分け後の6年制課程在籍者数であり、入学定員とは異なります。
  • 大阪大学は、入学後の学科振り分け制度と文部科学省の集計仕様の兼ね合いで、途中の進級率等のデータが実態と異なって極端に低く算出されています。そのため、最終的なストレート合格率(60.0%)を基準に実態を判断する必要があります。
  • 和歌山県立医科大学、国際医療福祉大学(成田薬学部)、順天堂大学、湘南医療大学、岐阜医療科学大学、国際医療福祉大学(福岡薬学部)は、いずれも2020年度以降に薬学部を開設した大学であり、2019年度入学者が存在しないため本分析の対象外としています。

入学者の約4割がストレートで合格できない!?

国公私立別のストレート合格率

2019年度に薬学部6年制課程に入学した学生のストレート合格率は、全体平均で58.8%でした。

区分入学者数ストレート合格者数ストレート合格率
国立大学560名448名80.0%
公立大学428名325名75.9%
私立大学9,906名5,629名56.8%
全体10,894名6,402名58.8%

全体の約6割がストレートで合格している一方、残り約4割は留年・退学・国試不合格のいずれかを経験しています

国公立と私立の間には約23ポイントの差がありますが、これは単純に「私立の教育が劣る」という話ではありません。
入学時の学力層の違い、入学定員の規模、定員充足率の問題など、複合的な要因が絡んでいます。

前年(2018年度入学者)との比較

区分2018年度入学者2019年度入学者増減
全体59.4%58.8%−0.6pt
国立80.2%80.0%−0.2pt
公立79.0%75.9%−3.1pt
私立57.6%56.8%−0.8pt

全体で−0.6ポイントの微減傾向です。公立大学の低下幅(−3.1ポイント)がやや大きいものの、調査対象校が4校と少ないため、個別大学の変動による影響が大きいと考えられます。

ストレート合格率80%以上の大学一覧

以下は、ストレート合格率が80%以上の大学です。
本記事では80%を明確な掲載基準として設定し、この基準を超えた大学を一覧で掲載しています。

順位大学名設置区分入学者数合格者数ストレート合格率
1東北大学国立20名20名100.0%
2千葉大学国立50名48名96.0%
3金沢大学国立36名34名94.4%
4京都大学国立15名14名93.3%
5富山大学国立59名54名91.5%
6北里大学私立273名230名84.2%
7九州大学国立30名25名83.3%
8広島大学国立41名34名82.9%
9長崎大学国立40名33名82.5%
10福岡大学私立231名186名80.5%
11北海道大学国立30名24名80.0%

東北大学は2019年度入学者20名全員が6年間でストレートに卒業・国家試験に合格しました。
少人数教育の強みを活かし、安定した成果を出しています。

このリストで特に注目すべきは北里大学福岡大学です。
いずれも200名を超える大規模校でありながら80%以上を達成しています。
大規模校ほど学力の幅が広くなりやすいため、これは特筆すべき実績です。

大規模校(入学100名以上)の分析

入学者100名以上の大学に絞ると、大規模校ならではの教育の難しさが浮かび上がります。

大規模校のストレート合格率 上位10校

順位大学名設置区分入学者数ストレート合格率
1北里大学私立273名84.2%
2福岡大学私立231名80.5%
3山口東京理科大学公立145名78.6%
4慶應義塾大学私立151名77.5%
5京都薬科大学私立365名75.6%
6星薬科大学私立301名73.8%
7岐阜薬科大学公立132名72.0%
8明治薬科大学私立308名70.8%
9近畿大学私立153名70.6%
10東邦大学私立239名70.3%

入学者300名を超える京都薬科大学(75.6%)星薬科大学(73.8%)明治薬科大学(70.8%)がストレート合格率70%以上を維持しています。
大規模校にとってこの水準を保つことは容易ではなく、教育体制の充実度がうかがえます。

💡 大規模校のジレンマ 
大規模校は入学定員が多い分、学力帯の幅が広くなります。
また、定員充足のために入学基準を調整せざるを得ないケースもあります。
2019年度入学者のデータでは、入学定員充足率が100%を大きく下回る大学も複数存在しており、入口の時点で構造的な課題を抱えている場合があります。

ストレート合格率が低い大学=教育の質が低い、と短絡的に結論づけることはできません
入学者の基礎学力、定員充足の状況、経済的事情による中退など、大学の努力だけでは解決できない要因も多くあります。

脱落のフェーズ分析:どこで差がつくのか

ストレート合格率は、入学から国試合格までの複数段階で決まります。
メディセレでは日頃から学生の学修状況を間近で見ていますが、公式データでもその実態が裏付けられています。

3段階の脱落構造

入学 10,894名(100%) 
↓ 約23%がここまでに留年・退学 
5年次進級 8,389名(77.0%) 
↓ 進級者の約12%が6年次で留年 or 卒業試験で不合格 
ストレート卒業 7,374名(67.7%) 
↓ 卒業者の約13%が国家試験不合格 
ストレート合格 6,402名(58.8%)

※カッコ内の割合はすべて入学者数(10,894名)を分母とした数値です。
矢印横の割合は各段階の在籍者を分母とした脱落率を示しています。

最大の関門は「入学から5年次への進級」です。
全体の23%にあたる約2,500名がこの段階で脱落しています。
1〜4年次の基礎科目・専門科目での留年や、経済的・個人的理由による退学が主な要因です。

メディセレに相談に来る学生の多くも、低学年次の基礎科目でつまずいた経験を持っています。
有機化学や生化学といった積み上げ型の科目で最初のつまずきを放置すると、その後の専門科目にも連鎖的に影響するパターンが少なくありません。

設置区分で見る脱落パターンの違い

国立大学(入学560名)
5年次進級率が95.5%と非常に高く、入学後の脱落が少ないのが特徴です。
入学時点での学力基盤が安定していることに加え、少人数教育によるきめ細かな指導が奏功していると考えられます。

公立大学(入学428名)
5年次進級率86.0%。国立よりやや低いものの、進級できた学生のその後の合格率は比較的高い傾向があります。

私立大学(入学9,906名)
5年次進級率75.6%で、入学者の約4人に1人が5年次までに脱落しています。
その後の卒業率・国試合格率も国公立を下回り、複合的に差が広がる構造になっています。

私立大学でストレート合格率70%以上の大学

私立大学の中でもストレート合格率70%以上を達成している大学は10校
全私立57校(2019年度入学者データあり)の約18%に相当します。

大学名入学者数ストレート合格率
北里大学273名84.2%
福岡大学231名80.5%
慶應義塾大学151名77.5%
京都薬科大学365名75.6%
星薬科大学301名73.8%
東京理科大学82名73.2%
明治薬科大学308名70.8%
近畿大学153名70.6%
東邦大学239名70.3%
武蔵野大学140名70.0%

特筆すべきは、この10校のうち8校(北里大学や福岡大学など)が、入学者150名を超える『大規模校』である点です。
定員が少ない東京理科大学(82名)のような小規模校が上位に入るのは構造的に理解しやすいですが、学力層が広がりやすい大規模校がこの水準を維持していることは、同大学の教育支援体制が極めて強固であることを立証しています。

ストレート合格率の分布

全75校のストレート合格率の分布は以下の通りです。

ストレート合格率大学数構成比
90〜100%5校6.7%
80〜90%未満6校8.0%
70〜80%未満16校21.3%
60〜70%未満16校21.3%
50〜60%未満9校12.0%
40〜50%未満10校13.3%
30〜40%未満7校9.3%
30%未満6校8.0%

最も多いのは60〜80%の帯域で、全体の42.7%を占めています。
一方、50%未満——つまり入学者の半数以上がストレートで合格できない大学も23校(30.7%)存在します。

90%以上を達成しているのは東北大学、千葉大学、金沢大学、京都大学、富山大学の国立5校のみです。

まとめ:薬学部選びに活かすために

① 全体の約4割がストレートで合格できていない 
2019年度入学者のストレート合格率は全体平均58.8%
薬学部に入学しても、6年間で一度も留年せず国家試験に合格するのは約6割です。

② 国公立と私立の差は約23ポイント 
国立80.0%、公立75.9%に対し、私立は56.8%。
ただし、これは入学時の学力層や定員充足率の違いも反映しており、教育の質だけの問題ではありません。

③ 最大の関門は「5年次への進級」
全体の23%が1〜4年次で脱落しています。
基礎科目のつまずきを早期に解消できるかどうかが、ストレート合格への分岐点です。

④ 大規模私立校でも80%超を達成している大学がある
北里大学(273名で84.2%)、福岡大学(231名で80.5%)は、規模と質の両立を実現しています。

⑤ 前年からほぼ横ばい 
2018年度入学者(59.4%)と比較して−0.6ポイント。構造的な課題は短期間では変わりにくいことを示唆しています。

薬学部を目指す方へ

大学選びでは、厚生労働省が発表する新卒合格率だけでなく、文部科学省のストレート合格率も必ず確認してください
新卒合格率が90%を超えていても、ストレート合格率が50%を下回る大学もあります。

ただし、ストレート合格率だけで大学の良し悪しを判断するのも適切ではありません。
少人数の大学では数名の増減で大きく数値が動きます。
また、留年が必ずしも「失敗」とは限りません。
家庭の事情や病気など、やむを得ない理由もあります。

ストレート合格率に加えて、カリキュラム、学修サポート体制、立地、学費なども含めた総合的な判断を行い、自分に合った環境を選ぶことが大切です。

この指標の限界

ストレート合格率は有用な指標ですが、万能ではありません。
入学者の学力層を反映しないため、偏差値の高い大学が構造的に有利です。
また、大学の教育改革の成果は入学年度が新しいコホートにしか反映されないため、2019年度入学者のデータが最新の教育体制を反映しているとも限りません

メディセレでは、新卒合格率・出願対比合格率・ストレート合格率の3つの指標を組み合わせた多角的な分析を通じて、薬学教育の現状と課題をこれからもお伝えしてまいります。


データ出典:

※本記事のストレート合格率は、文部科学省調査における「入学時の在籍者数」に対する「標準修業年限内の国家試験合格者数」の割合として算出しています。
入学後に学科振り分けを行う大学は、6年制課程への所属が確定した時点の在籍者数を入学者数としています(文部科学省の注記に準拠)。

【免責事項】
本記事のデータおよび分析は、文部科学省の公表資料に基づき客観的に算出したものであり、特定の大学の総合的な評価を断定するものではありません。
各大学の教育体制やカリキュラムは年度によって変化するため、実際の志望校選定にあたっては、必ず各大学の公式ウェブサイトやパンフレット等で最新の情報をご確認ください。

この記事の著者

田原 靖弘

【株式会社Medisere取締役】
【特定行政書士】

18年間警察官として勤務し、府下最年少の知能犯係長、捜査第二課係長として詐欺、横領、背任、偽造、不正受給といった経済事犯の捜査指揮を行う。
告訴・告発事件捜査において、警察庁表彰の実績も持つ。

現在は、株式会社Medisere取締役と行政書士事務所代表を兼務。

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