第111回薬剤師国家試験の傾向と対策
2026年2月(第111回)の薬剤師国家試験を受験される皆さん、日々の勉強お疲れ様です。
国家試験は広大な範囲から出題されるため、「何から手をつければいいのか」「今の勉強法で正しいのか」と不安を感じている方も多いかもしれません。
この記事では、薬剤師国家試験予備校メディセレ代表の児島 惠美子氏からご提供いただいた原稿と最新のデータを基に、第111回国家試験の概要、近年の出題傾向、そして合格を掴むための具体的な対策法について解説します。
著者について
薬剤師国家試験予備校メディセレのしゃっちょう児島惠美子です。
私は自分が薬剤師国家試験に不合格になった経験から、国家試験に落ちたらどれだけ大変かを伝え、落ちないように国家試験対策をするべきと当時はあまりなかった国家試験対策を始めました。
また、私は不合格により居場所がなくなりましたので居場所を創りたいとメディセレを起業しました。
勉強に悩む皆さんに少しでもヒントをお伝えできればと思います 。

第111回薬剤師国家試験(2026年実施)の概要
まずは、試験の基本的な情報を確認しましょう。
- 試験日程: 2026年2月21日(土)・22日(日)
- 試験時間:
- 1日目: 9:30~17:45
- 2日目: 9:30~18:00
1日目の試験スケジュール
- 9:30 ~ 11:00(90分): 必須問題試験
- (物理・化学・生物、衛生、薬理、薬剤、病態・薬物治療、法規・制度・倫理、実務)
- 12:30 ~ 15:00(150分): 一般問題試験(理論問題)
- (物理・化学・生物、衛生、法規・制度・倫理)
- 15:50 ~ 17:45(115分): 一般問題試験(理論問題)
- (薬理、薬剤、病態・薬物治療)
2日目の試験スケジュール
- 9:30 ~ 11:35(125分): 一般問題試験(薬学実践問題)
- (物理・化学・生物、衛生、実務)
- 13:00 ~ 14:40(100分): 一般問題試験(薬学実践問題)
- (薬理、薬剤、実務)
- 15:30 ~ 18:00(150分): 一般問題試験(薬学実践問題)
- (病態・薬物治療、法規・制度・倫理、実務)
薬剤師国家試験の合格基準
薬剤師国家試験の合格基準は「絶対基準」と「相対基準」の2つの側面があります。特に注意すべきは「足切り」です。
1. 合格基準(足切り)
合格するためには、以下の基準をすべて満たす必要があります。
- 必須問題: 全90問 のうち、総点で70%以上(63問以上) 、かつ、各科目で30%以上の得点が必要です 。
| 必須問題の科目 | 出題数 | 足切り基準(30%以上) |
| 物理・化学・生物 | 15問 | 5問以上 |
| 衛生 | 10問 | 3問以上 |
| 薬理 | 15問 | 5問以上 |
| 薬剤 | 15問 | 5問以上 |
| 病態・治療 | 15問 | 5問以上 |
| 法規・制度・倫理 | 10問 | 3問以上 |
| 実務 | 10問 | 3問以上 |
ポイント: 一般問題(理論・実践)には科目ごとの足切り基準はありません 。しかし、必須問題で1科目でも基準(例:衛生で2問しか取れない)を下回ると、たとえ総合点が合格ラインを超えていても不合格となります。
2. 全体の合格基準(相対基準)
全体の合格ラインは、その年の試験の難易度などによって変動する「相対基準」が採用されています 。
近年の合格基準点(総点345点)の推移:
- 第106回: 215点
- 第107回: 217点
- 第108回: 235点
- 第109回: 210点
- 第110回: 213点
第108回のように合格ラインが大きく変動することもあり、油断はできません。
(参考)第110回(2025年実施)の合格状況
近年の試験の厳しさを知るために、第110回の結果を見てみましょう。
- 全体の合格率: 68.85%(受験者13,310名、合格者9,164名)
- 6年制新卒の合格率: 84.96%(受験者8,061名、合格者6,849名)
- 6年制既卒の合格率: 43.94%(受験者5,039名、合格者2,214名)
このデータが示す通り、国家試験は「新卒」で合格することが極めて重要です。

近年の薬剤師国家試験の出題傾向
111回目を迎える国家試験ですが、出題傾向にはいくつかの特徴があります 。
1. 昔から出続ける問題もある
時代や薬のトレンドが変化しても、昔から変わらず出続ける問題(基礎的な概念や重要な法規など)も存在します 。こうした定番問題を確実に得点することが合格の鍵となります。
2. 新薬は出るのか?
「広く一般的に知られるようになったものを国家試験に出す」という暗黙の了解があるため、承認されたばかりの新薬がすぐに出題されることは稀です 。 ただし、世間で大きく報道されたり、社会的な影響が大きかったりしたものについては、出題されることがあるため注意が必要です 。
3. コアカリキュラム改訂の影響は?
薬学教育のコアカリキュラムも定期的に改訂されますが、改訂後すぐに試験内容が激変するわけではありません 。新しい内容が教育現場に浸透してから国家試験に反映されるよう配慮されているため、過度に反応する必要はありません 。
領域別(科目別)の出題傾向と対策
国家試験は総点が重要ですが、科目ごとに「得点をあげやすい科目」と「あげにくい科目」が存在します。メディセレ調べの第100回~第110回の正答率データを見ても、「物理」(特に理論問題 )のように平均正答率が一貫して低い難関分野と、「薬理」や「法規」のように比較的安定して正答率が高い(=得点源にすべき)分野があることがわかります。
ここでは、メディセレ児島代表による各科目の攻略法をご紹介します。
『物理』攻略法
残念ながら毎年難しいです。足切りを心配する人が多いですが、必須の足切りは「物理・化学・生物」の3科目合計(15問中5問)で判定されます 。どうしても物理が苦手なら、化学と生物を頑張る戦略もアリです 。 物理化学は計算をメインに公式・計算式を学び、分析化学は過去問中心にやりましょう 。
『化学』攻略法
難易度が低めの範囲から着手しましょう 。過去問5年分はやってほしいです 。
『生物』攻略法
分子生物学と機能形態学は、「薬理」や「病態・薬物治療」と繋がります 。つながりを意識して学ぶと知識が残りやすくなります。
『衛生』攻略法
昔の衛生は暗記中心でしたが、最近は知識を使って考える問題が増えています 。模擬試験の新問をたくさん解き、解き方を身に付けてください 。
『薬理』攻略法
得点源になる科目です。自律神経系に関する受容体の働きが、他の範囲の作用機序にも繋がります。機序と作用を確実に覚えてください。カタカナが多いですが、気合を入れて暗記を頑張りましょう。
『薬剤』攻略法
ADME(吸収、分布、代謝、排泄、相互作用)が重要です 。過去問を理解しておけば得点しやすいので、苦手意識を持たずにやるべき科目です 。
『病態・薬物治療』攻略法
重要8疾患(特に悪性腫瘍と感染症)を確実に押さえましょう 。難問が出ても、それに時間を取られすぎないよう気にしないことも大切です 。
『法規・制度・倫理』攻略法
得点源にできる科目です。しかし、暗記科目として後回しにされがちで、結果的にやり忘れるケースも。計画的に学習しましょう 。
『実務』攻略法
実習での知識も問われるため、様々な場面を思い出すことも大切です 。計算問題も出ますが、簡単なものが多いので、落ち着いて問題を見れば解けます 。
合格を掴むための効率的な勉強法
最後に、膨大な試験範囲を攻略するための効率的な勉強法です。
1. 「正答率の高い過去問」は必ずマスターする
これが最も重要です。国家試験は、難しい問題を解くことよりも、「皆が解ける問題を絶対に落とさない」ことが合格の鍵となります。
- 第108回: 合格点235点(正答率60%以上の問題は261題)
- 第109回: 合格点210点(正答率60%以上の問題は226題)
- 第110回: 合格点213点(正答率60%以上の問題は230題)
データが示す通り、正答率60%以上の問題を確実に取れれば合格ラインに到達します。難しい問題に時間をかけすぎず、取れるところを確実に取りましょう 。
2. 模試を最大限に活用する
過去問が「出題委員からのメッセージ」であるなら、模擬試験は「ここが狙われるかもよ」という「未来問」です。
応用力を付けるためにも、模擬試験は2社以上の予備校のものを受けることをお勧めします 。
3. 予備校を頼る(メディセレの利点)
卒業延期になったり、国試不合格になったりする人は、要領が悪かったり、大切な点が人とずれていたり、勉強が作業になったりと何かしら理由があります。しかし、本人は一生懸命やっているため、その改善点を自分一人で見つけるのは困難です。
メディセレは「やるべき事を絞り、一人一人の改善点を見つけ出す」ことを重視しています。それゆえ、業界ナンバー1の合格率を創業時から18年間維持しています(第110回スクール生合格率85.7%※出席率85%以上)。
最後は「どれだけ良問をアウトプットできるのか」が勝負です。メディセレでは問題演習講座を直前期に開催しますので、不安な方は一緒にやっていきましょう。

