薬学部における「OSCE」とは?試験内容や効果的な対策方法を紹介

薬学部の学生にとって「OSCE(客観的臨床能力試験)」は避けては通れない大切な試験です。5年次には実務実習が行われますが、OSCEに合格していないと実習に進めません。本記事では、OSCEの試験内容や対策方法について詳しく紹介します。これからOSCEを控えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事を読むための時間:3分
薬学部の「OSCE」とは
薬学部の「OSCE(Objective Structured Clinical Examination)」は、4年次の12月~1月頃に行われる薬学共用試験の1つです。単なる知識を問う試験ではなく、薬剤師として必要な態度や技能を確認するための実技試験であり、5年次に行われる実務実習に進むために必須とされています。ここでは、以下の4つの観点からOSCEについて詳しく解説します。
- 試験の目的
- 課題項目
- 出題方式
- 評価制度
試験の目的
OSCEの目的は、薬剤師として必要な技能・態度・コミュニケーション能力が備わっているかを確認することです。5年次の実務実習では、病院や薬局で実際に患者と接しながら学びますが、本来は薬剤師の資格を持っていない学生は調剤行為を行えません。そのため、実習に参加する前に、知識と態度、コミュニケーション能力や技能が一定の水準に達していることを確認する必要があります。
OSCEは、実習において調剤や服薬指導を安全に行えるかを確認する役割を担っています。OSCEに合格することで、医療現場に立つ準備が備わっていると判断され、実務実習への参加が可能とされるのです。
課題項目
OSCEで取り扱う課題は5つの領域に分かれており、各領域の課題のなかから1課題のみを実施します。ただし、「薬剤の調製」領域では、2課題実施することになっています。
|
領域 |
課題項目 |
実施課題数 |
|
1. 患者・来局者応対 |
|
1課題 |
|
2. 薬剤の調製 |
|
2課題 |
|
3. 調剤監査 |
|
1課題 |
|
4. 無菌操作の実践 |
|
1課題 |
|
5. 情報の提供 |
|
1課題 |
出題方式
OSCEでは、課題ごとに複数の「ステーション」と呼ばれる試験会場が用意され、中はいくつかの「レーン」に分けられています。受験生はステーションを順番に回り、レーンで課題に取り組みます。各課題ごとに定められている時間は、課題閲覧時間が1~2分で、実施時間が5分間です。各領域ごとの実施例と評価のポイントを紹介します。
|
領域 |
課題項目 |
実施方法 |
評価のポイント |
|
領域1 |
病棟での初回面談 |
入室時に挨拶をして許可を得たあと、模擬患者に対して最初のインタビューを行う。 |
インタビューの内容に加え、身だしなみや態度、声の大きさや話す速さなども評価される。 |
|
領域2 |
計量調剤(水剤) |
処方箋にもとづいて、水剤を調製する。 |
秤量の計算や正確な秤取など、水剤調製に必要な基本的な技能について評価される。 |
|
領域3 |
計数調剤 |
処方箋に従って薬袋を作成し、計数調剤を実施する。 |
計数調剤に必要な技能が備わっているか評価される。 |
|
領域4 |
注射剤混合 |
クリーンベンチを使用し、注射処方箋にもとづいてアンプルやバイアルから薬液を採取し、バッグへ注入するなどの注射剤調製を行う。 |
無菌操作を実践するための基本的な技能が備わっているか評価される。 |
|
領域5 |
薬局での薬剤交付 |
薬局に模擬患者を迎え入れ、自己紹介をして同意を得たうえで服薬指導する。 |
服薬指導の内容に加えて、身だしなみや立ち振る舞い、声の大きさや話す速度なども評価される。 |
評価制度
OSCEの評価は、各領域ごとに2名の評価者が担当し、大学教員などの内部評価者と、他大学の教員や薬剤師といった外部評価者で構成されます。評価方法には、チェックリスト形式で判断する約20項目の細目評価と、全体の流れや円滑さを確認する概略評価があります。どちらも評価マニュアルが作成され、公平性を保つためのモニター員が派遣されるのが特徴です。
「OSCE」の対策方法
OSCEの対策方法を3つ紹介します。
- ロールプレイで手順を確認する
- 教科書や参考書で復習する
- OSCEは加点方式であることを意識する
ロールプレイで手順を確認する
OSCEは実技試験のため、ロールプレイで手順を確認しておくことが大切です。学部の友人などとロールプレイを行い、薬剤師役と患者役に分かれてシミュレーションを繰り返しましょう。
教科書や参考書で復習する
OSCEは実技試験ですが、基礎的な薬学の知識が必要です。そのため教科書や参考書で、調剤の手順や薬の説明内容などを復習しておくことが大切です。
OSCEは加点方式であることを意識する
OSCEは減点方式ではなく加点方式です。完璧にしなくてはならないと緊張しすぎず、課題を1つ1つ着実にこなしていくことが大切です。焦らずに落ち着いた態度で臨みましょう。
事前に対策を行い、OSCE試験に臨みましょう
OSCEでは、知識を正しく理解しているだけでなく、現場でどう生かすのかを問われます。ロールプレイによる練習や教科書での復習を繰り返して、事前の対策を行いましょう。

