薬剤師のための末梢神経障害(PN)治療の最前線レビュー
末梢神経障害(PN)は、末梢神経の損傷と定義される疾患であり、世界中の成人の約1%に影響を与えています。この疾患の有病率は年齢とともに上昇し、60歳を超える人口の約6%から10%に影響を及ぼすと推定されています。症状の重症度は、足の指の軽度のしびれから、まれに車椅子が必要となるほどの重度の神経障害まで様々です。PNは、感覚、運動、および自律神経の症状を引き起こす可能性があります。
一般の臨床医が診察するPNの最も一般的なタイプは、遠位対称性多発ニューロパチーとも呼ばれる長さに依存する末梢神経障害(LDPN)です。LDPNは、通常、最も長い神経軸索である足の指に症状が現れ、時間とともにゆっくりと膝や手に向かって近位へと進行する特徴を持っています。PNの原因は200以上存在しますが、西洋諸国において最も一般的な原因は糖尿病であり、PN症例の50%以上を占めています。その他にも、アルコール使用、パクリタキセルやビンクリスチン、シスプラチンなどの神経毒性のある化学療法薬、シャルコー・マリー・トゥース病などの遺伝的要因が主な原因として挙げられます。診断検査を行っても、最大で27%の成人では原因が特定されない場合があります。
JAMA Review
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2841552
1. PNの主要な病因と診断アプローチ
LDPNの診断は、臨床的な兆候と症状に基づいて行われます。PNの原因を特定するために推奨される初期検査には、糖尿病を確認するための血糖値(またはHbA1c)、ビタミンB12とその代謝産物(メチルマロン酸など)、そしてモノクローナルガンモパチーを除外するための血清タンパク電気泳動と免疫電気泳動が含まれます。PNの予後はその根本原因に依存しますが、たとえ治療法が存在するケースであっても、神経損傷の完全な回復はまれであり、症状が持続することが多いです。
2. 神経因性疼痛管理の第一選択薬のクラスと作用機序
LDPNに伴う神経因性疼痛の管理のために、薬物療法が用いられます。神経因性疼痛に対する第一選択薬には、主に以下の3つのクラスがあります。
三環系抗うつ薬(TCA): アミトリプチリンやノルトリプチリンなどが含まれます。
第一選択薬の選択にあたっては、患者の併存疾患、副作用プロファイル、および併用薬との潜在的な相互作用を考慮する必要があります。また、疼痛が続く場合、異なるクラスの第二の第一選択薬を組み合わせた併用療法が追加的な利益をもたらす可能性があります。なお、オピオイドは神経因性疼痛の治療薬としては推奨されていません。
α2-δカルシウムチャネルサブユニットリガンド: これにはガバペンチンとプレガバリンが含まれます。これらの薬剤は神経因性疼痛に対する第一選択薬です。
セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI): デュロキセチンやベンラファキシンなどが含まれます。
3.主要治療薬(プレガバリン、デュロキセチン、アミトリプチリン)の比較と患者指導
第一選択薬の各薬剤について、作用クラス、推奨用量、有効性、および注意すべき副作用を比較します。
アミトリプチリン (Amitriptyline)
アミトリプチリンは三環系抗うつ薬(TCA)に分類されます。推奨される総用量は、10 mgから75 mgを1日1回投与されます。糖尿病性PNの疼痛管理において、単独療法や併用療法で有効性が確認されています。患者指導で留意すべき副作用には、便秘、めまい、口渇、傾眠があります。同じTCAクラスのノルトリプチリンと比較して、アミトリプチリンの方が副作用が多い傾向にあります。
治療選択における区別に有益な情報: 薬剤師は、これらの第一選択薬を選択する際、特に副作用プロファイルと投与回数に注目することで、患者の服薬アドヒアランスと安全性を向上させることができます。例えば、プレガバリンは1日2回投与が必要であり、傾眠や浮腫に注意が必要ですが、デュロキセチンやアミトリプチリンは1日1回投与で済むという違いがあります。また、アミトリプチリンは抗コリン作用(口渇、便秘)が強いため、高齢患者などでは注意深い使用が求められます。
プレガバリン (Pregabalin)
プレガバリンはα2-δカルシウムチャネルサブユニットリガンドに分類されます。推奨される総用量は、1日300 mgから600 mgを2回に分けて投与されます。糖尿病性PNにおいては、300 mgのプレガバリン投与群はプラセボと比較して30%以上の疼痛強度軽減率が有意に高かったというデータがあります。患者指導の際に注意すべき主な副作用には、傾眠(眠気)、めまい、および末梢浮腫があります。
デュロキセチン (Duloxetine)
デュロキセチンはSNRIに分類される薬剤です。推奨される総用量は、60 mgから120 mgを1日1回投与されます。糖尿病性PNにおいて、デュロキセチンはプラセボと比較して50%以上の疼痛改善で有効性が示されています。特に、デュロキセチン60mgは、プレガバリン300mgと比較して50%以上の疼痛軽減率が高かったという報告もあります。注意すべき副作用には、頭痛、眠気、倦怠感が挙げられます。
4.メコバラミンの位置づけとミロガバリンに関する考察
メコバラミン(ビタミンB12)について
末梢神経障害の原因の1つとして、ビタミンB12欠乏症が明確に挙げられています。B12欠乏によるPNは、感覚消失、錯感覚、運動失調(アタキシア)、および中枢神経系の関与を示す認知機能障害を呈することがあります。PNの原因がB12欠乏症である場合の治療は、B12の補充であり、通常は筋肉内注射(週に1 mgを1ヶ月間、その後月1回)または高用量の経口補充(1日1~2 mg)によって行われます。
PNの根本原因がビタミンB12欠乏であることが判明した場合、B12補充は原因療法として機能します。しかし、本レビューのソース情報によると、メコバラミン(またはビタミンB12)は、神経因性疼痛に対する第一選択薬(プレガバリン、デュロキセチン、アミトリプチリンなど)のリストには含まれていません。したがって、B12欠乏症ではないPN患者の疼痛管理において、メコバラミンが第一選択薬と同等の効果を持つかどうかについては、このレビューの資料からは確認できません。
ミロガバリン(タリージェ)について
提供されたソース資料には、ミロガバリンまたは「タリージェ」という名称に関する具体的な言及はありませんでした。このため、本レビューの情報のみに基づき、ミロガバリンの有効性、用量、またはプレガバリンとの比較に関する詳細な情報を提供することはできません。ただし、プレガバリンはα2-δカルシウムチャネルサブユニットリガンドとして第一選択薬に位置づけられています。
