現場薬剤師が押さえておくべき「実習」と「業務」の未来:対人業務と教育改革の最前線 | メディセレメディア

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現場薬剤師が押さえておくべき「実習」と「業務」の未来:対人業務と教育改革の最前線

#教育改革#薬剤師#薬学実践実習

薬剤師を取り巻く環境は、今まさに歴史的な転換点を迎えています。「新薬剤師養成問題懇談会」等の議論が加速する中、薬剤師の職能の軸足は従来の「対物」から「対人」、さらには地域医療や公衆衛生の向上へと明確にシフトしています。

本記事では、2028年度(令和10年度)から本格始動する教育改革と、法改正がもたらす業務変革の最前線を、専門的知見から精緻に分析します。
現場の薬剤師が「変化に翻弄される側」ではなく、「変化を主導する側」に立つための指針を提示します。

1. 薬剤師法第1条の精神への回帰

薬剤師法第1条には、「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする」と記されています。

現在進められている改革は、この原点への立ち返りです。
在宅医療の深化や地域包括ケアシステムの構築といった社会ニーズの変容を受け、薬剤師には単なる「薬の調製者」を超え、薬物療法の個別最適化を担う高度な臨床能力が求められています。
教育と業務の両面で起きている地殻変動を理解することは、自らの職能価値を維持・向上させる上で不可欠なプロセスです。

2. トピック①:実習生受け入れの質が変わる「薬学実践実習」の全貌

2028年度(令和10年度)より、新カリキュラムを履修した学生が5年次に到達するタイミングで、新たな実習制度「薬学実践実習(アドバンスト実習)」が本格化します。

  • 定義と目的 
    従来の必修22週間の実務実習に加え、学生の希望や進路に応じてさらに「8週間程度」実施される選択制の実習です。
    これは単なる期間の延長ではなく、病院・薬局での高度な臨床体験や、行政・企業等の多様な領域における専門的能力の修得を目的としています。
  • 「1週間単位」の柔軟な運用と多様な実習先 
    実習は1週間を基本ユニットとし、医療提供施設以外での実施も想定されています。
    • 行政・公的機関: PMDA(医薬品医療機器総合機構)、自治体、保健所等での薬事行政・監視指導業務。
    • 企業・研究機関: 製薬企業での臨床開発や治験関連業務(採用活動とは厳格に区別される)。
  • 現場にやってくる学生の像 
    すでに一部の大学で先行実施されている事例では、アンケート調査(「実務実習終了後、引き続き医療現場で実施している実務実習関連のプログラムについて」の大学からの回答(2025年6月実施のアンケート調査より))の結果、以下のような「目的意識の高い学生」を対象とした高度なプログラムが展開されています。
    • 大学-25: がん等の高度薬学管理や多職種連携を学ぶ「アドバンスト実務実習」。
    • 大学-19: 福祉・看護学生とチームを形成し、実地で学ぶ「在宅医療特論演習」。
    • 大学-22: 伝統医学を深く理解し統合医療を学ぶ「漢方調剤薬局実務演習」。
  • 指導薬剤師の役割と客観的評価の重要性
    指導側には「臨床における実務実習に関するガイドライン(令和5年12月)」に準拠した指導体制が求められます。
    評価には「評価ルーブリック(概略評価表)」が導入され、客観的な基準で学生を評価することが必須となります。
    これは学生のためだけでなく、指導側の負担軽減と教育の質担保、さらにはトラブル防止の観点からも重要です。
  • 現場のメリット:リクルートと刺激 
    質の高い学生との交流は、優秀な人材の確保(リクルート効果)に直結します
    また、最新の薬学教育を受けた学生を指導することは、現場薬剤師にとって「生涯学習」への強力な刺激となります。

3. トピック②:臨床実践能力の担保へ「卒後臨床研修」のガイドライン化

免許取得はゴールではなく、臨床家としてのスタートです。
厚生労働省の検討会では、薬剤師免許取得直後の臨床研修の重要性が強調され、その制度化・ガイドライン策定に向けた動きが本格化しています。

最大の焦点は、「卒前(実務実習)から卒後(臨床研修)までの一貫性」です。
生涯学習の一環として、薬剤師認定制度認証機構(CPC)の認証を受けた研修制度や専門薬剤師制度と連動させ、どの医療現場においても一定水準以上の臨床実践能力を発揮できる仕組みづくりが進められています。

4. トピック③:法改正が迫る業務効率化と「対人業務」への強制シフト

法改正とデジタル化により、現場のオペレーションは劇的に変化します。
特筆すべきは、対物業務を効率化し、創出された時間を「薬剤師しかできない業務」へ集中させるという明確な方針です。

  • 調剤業務の一部外部委託と機械化 
    厚生労働省は、医療安全の確保を前提に、調剤業務の外部委託や非薬剤師(機器・事務等)の活用を推進しています。
    これは、薬剤師を単純な作業から解放し、対人業務に専念させるための戦略的施策です。
  • 認定薬局制度による機能拡充
    今後は、入退院時の情報連携を担う「地域連携薬局」や、がん等の高度な専門性を発揮する「専門医療機関連携薬局」といった認定薬局の機能がより重視されます。
  • 法定義務としての「調剤後フォローアップ」
    改正薬機法により、「調剤後の継続的な服薬状況の把握・指導」が義務付けられました。
    これは単なるサービスではなく、法的な責務として、服用期間中の全プロセスに関与することが求められています。

【業務のトランスフォーメーション:比較表】

項目従来の業務形態未来の業務形態(法改正・デジタル化後)
注力ポイント調製・交付などの対物業務が主処方提案・個別最適化・継続的フォローアップ
調剤プロセス薬剤師による手作業、目視監査外部委託、機械化、非薬剤師の戦略的活用
法的責務窓口での薬剤交付と説明服用期間中の継続的なモニタリング・指導(義務)
情報の管理紙のお薬手帳、施設内の閉じた情報電子処方箋、ICTによる多職種間のリアルタイム共有
薬局の定義処方箋に基づく備蓄・供給拠点地域連携薬局・専門医療機関連携薬局としての機能発揮

5. まとめ:変わりゆく制度を「成長の機会」に変える

現在起きている教育改革と法改正は、薬剤師が「薬の専門家」として国民から真に信頼される存在であり続けるための、再定義のプロセスです。

後進の育成(実習指導)に携わること、そして自らが認定・専門薬剤師の取得等を通じてスキルアップを図ることは、同じ「質の高い医療提供」という目的に向かっています。
制度の変化に翻弄されるのではなく、これを「薬剤師が本来の職能を最大限に発揮できるチャンス」と捉えるべきです。

法が求める「継続的な関与」を実践し、高度な臨床能力を磨き続けること。
その姿勢こそが、次代の薬剤師のスタンダードとなります。
未来の業務モデルは、今、自分たちの手で創り上げるものなのです。

【士業からの視点:士業、そして全職業人に共通する「対人」への回帰】

以上の薬剤師の業務変革――すなわち機械化等による「対物(調剤)」の効率化と、それによって生まれた時間での「対人(臨床・指導)」へのシフトは、同じ国家資格を持つ特定行政書士の立場から見ても、「至極当然であり、必然の流れ」であると確信します。

かつて士業は、法律で守られた「独占業務」を遂行していれば安泰とされた時代がありました。

しかし、それは過去の話です。

行政書士の世界でも、単なる書類作成代行から、顧客の課題を解決するコンサルティング業務へと価値の源泉が移っています。

さらに、この潮流は士業に限った話ではありません。

AI(人工知能)やデジタルトランスフォーメーション(DX)の目覚ましい発展は、あらゆる職業に対し、「AIに代替可能な業務」と「人間にしかできない業務」の選別を突きつけています。

さきほどもお話ししたとおり、機械化や外部委託によって対物業務を効率化し、創出された時間を「高度な判断」や「対人コミュニケーション」に充てることこそが、AI時代の生存戦略です。

変化に翻弄されるのではなく、主導する側へ」。

このメッセージは、薬剤師のみならず、これからの時代を働くすべてのプロフェッショナルに向けた共通の指針と言えるでしょう。

お互いに襟を正して頑張りましょう!

【出典元】第25回 新薬剤師養成問題懇談会資料(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shiryo_260216.html

この記事の著者

田原 靖弘

【行政書士】
18年間警察官として勤務し、捜査二課係長として詐欺や横領、補助金不正といった経済犯罪の捜査を専門に担当。告訴・告発事件処理では警察庁表彰の実績も持つ。
現在は、株式会社Medisere取締役と行政書士事務所代表を兼務。
その元刑事としての豊富な経験と独自の視点を活かし、以下の分野で専門的なサービスを提供している。
経営者・起業家向け:法務リスク管理、資金調達と事業成長戦略の支援
薬局・医療関係者向け:業界に精通した実践的アドバイスと行政手続き

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