【第111回薬剤師国家試験】総評と未来の受験生へ贈る合格への戦略的アドバイス
1. はじめに:受験生へのねぎらいと本記事の目的
第111回薬剤師国家試験を受験された皆様、本当にお疲れ様でした。
国家試験は膨大な知識量だけでなく、2日間にわたる極度の緊張感に耐えうる体力と精神力が試される過酷な試練です。
まずは、この大きな壁に立ち向かい、最後まで走り抜いた自分自身を心から褒めてあげてください。
これから合格を目指す薬学生の皆さんにとって、最新の試験傾向を把握することは、単なる情報の整理ではなく「合格への確かな一歩」となります。
講師として長年トレンドを分析してきた視点から、今回の試験が示した「新しい薬剤師像」と、それに基づいた必勝戦略を分かりやすく解説します。
2. 第111回試験の全体像:自己採点結果と難易度の推移
今回の第111回試験は、科目ごとの難易度の差が非常に激しいのが特徴でした。メディセレの自己採点システム(2月23日午前10時時点)による平均点は「235.7点」となっています。
例年、自己採点は意欲の高い層から入力されるため、最終的な平均点はここから数点下がることが予想されます。
特筆すべきは、出願者数が14,262名と前回より563名減少している点です。
厚生労働省は例年9,000名前後の合格者数を目安にしていると考えられ、その中でどのように順位を確保するかが鍵となります。
第109回〜111回 難易度比較
直近3年の傾向を振り返ると、問題の性質が変化していることが分かります。
| 試験区分 | 第109回 | 第110回 | 第111回 |
| 必須問題 | 標準 | 難化傾向 | 解きやすい |
| 理論問題 | 難化 | 難化 | 比較的解きやすい |
| 実践問題 | 標準 | 標準 | 難化(解きにくい) |
合格ラインの予測と安心材料
受験生の皆さんが最も気になる合格ラインですが、私たちのデータ分析では「210点台」に落ち着くのではないかと推測しています。
根拠となるのは、受験生の正答率が60%を超えた問題数です。
今回は232問となっており、これは合格ボーダーが低めだった第106回試験と同様の傾向です。
実践問題の難化に惑わされず、まずはこの「232問」のボーダーを意識して結果を待ちましょう。
3. 「計算・図表問題」への徹底対策:時間は最大の武器
第111回はまさに「計算祭り」といえる出題内容でした。
かつては「計算は捨てても他でカバーできる」という戦略も通用しましたが、今の試験ではその考えは通用しません。
- 計算問題:17問
- 図表・グラフ問題:28問
メディセレからの戦略的アドバイス
- 物理計算は「門番」である:物理の計算問題は「必須問題」で3年連続出題されました。これは、計算を避ける学生を入り口で振り分ける「ゲートキーパー」の役割を果たしています。基礎公式のマスターは、もはや「加点」ではなく「通過儀礼」です。
- 衛生・薬理・薬剤の計算力:衛生でも計算が多用されており、特に図表を読み解く能力が点差に直結しています。
- 時間配分の死守:計算問題が17問あるということは、それだけ「思考時間」を奪われるということです。計算を基礎から積み上げておくことは、試験本番での「時間の節約」という最大の武器になります。
4. より実践的・総合的な思考力が問われる時代へ
現在の出題トレンドは、単一の疾患知識を問うフェーズから、現場での「臨床判断能力」を問うものへと完全にシフトしています。
- 「8疾患」を軸とした多角的アプローチ:主要疾患の理解は当然として、今回の試験では「糖尿病に腎障害を併発した症例」など、複数疾患の併発症例が昨年以上に増加しました。
- 問題文の長文化への対応:薬害の問題(問181等)では、問題文が3ページにわたるものも登場しました。
【トピック:長文問題の解法】 膨大な情報を前にパニックにならないためには、「まず設問(問いの内容)を読み、次に図表をチェックしてから、本文をスキャンする」という訓練が必要です。
すべての文字を精読するのではなく、薬剤師として必要なデータ(検査値や既往歴)を拾い上げる読解力を養いましょう。
5. 過去問の「深い理解」が合格の鍵
過去問演習の質が合否を分けます。単に答えを覚えるのではなく、なぜその選択肢が正解なのか、周辺知識とどう結びつくのかを深掘りしてください。
- 新形式「連問」への対応:実務の問338-339などで初めて導入された連問形式は、一箇所での躓きが連鎖するリスクがあります。知識の正確性がより求められます。
- 薬理の得点源化:薬理(問156, 159, 166等)では初出題の薬物も登場しましたが、基本的には安定した得点源にすべき科目です。新しい薬に動じない基礎力を固めましょう。
- 臨床マインドの育成:『アンサングシンデレラ』のような漫画やドラマ、刑事ドラマで扱われるトピック(水性の毒物など、世間で話題の科学知識)が試験に反映されることもあります。日常のニュースを「薬剤師の視点」で見る習慣が、思わぬ1点に繋がります。
6. 【安心情報】禁忌肢を過度に恐れないために
受験生が最も不安に感じる「禁忌肢」について、正確な情報をお伝えします。私たちのデータ分析によると、「禁忌肢の選択のみが原因で不合格になるケース」は、ほぼ存在しません。
- 「1つ選んだら即不合格」という極端な運用はされていません。
- 禁忌肢を恐れるあまり、消極的な選択をして点数を落とすことの方が大きなリスクです。
「患者さんに危害を加えない」という薬剤師としての基本倫理を持っていれば、冷静に解くことで必ず回避できます。過度な不安は捨てて、目の前の1点をもぎ取ることに集中してください。
7. おわりに:社会で活躍する未来の薬剤師たちへ
国家試験は非常に高い壁に見えるかもしれません。しかし、今あなたが必死に学んでいる知識は、試験に受かるためだけのものではありません。将来、あなたの目の前に現れる患者さんや、その家族を救うための大切な知恵となります。
合格発表までの期間は、まず心身をゆっくり休めてください。そして、これまで支えてくれた周囲への感謝を忘れず、「一日一善」の心持ちで、自信を持ってその日を待ちましょう。
皆さんが医療のプロフェッショナルとして社会へ羽ばたき、誰かの役に立てる喜びを実感する日が来ることを、私は確信しています。
未来の薬剤師であるあなたを、これからも全力で応援し続けています!
