【令和8年改定】門前薬局はもう限界?生き残るための「3つの転換点」を徹底解説
1. はじめに:令和8年度改定の「正体」を読み解く
令和8年度(2026年度)の調剤報酬改定は、これまでの「緩やかな誘導」から「強硬な構造改革」へとフェーズが変わりました。
その正体は、「立地依存型経営への死刑宣告」と「質の高い薬局機能への巨額投資」という極端な二極化です。
これまでのように病院の前に店を構え、処方箋を待つだけの「受け身の経営」は、もはや存続すら許されない時代に突入しようとしています。とても恐ろしいことです。しかし、この改定は、地域の健康を支える覚悟を持った経営者にとって、自局の価値を最大化し、「選ばれる薬局」へと飛躍する千載一遇のチャンスです。
本記事では、経営者が直面する「立地」「人」「地域・在宅」という3つの転換点について、具体的な数値を交えて戦略的に解説します。
2. 【立地の壁】門前・モール型経営への包囲網
今回の改定で最も衝撃的なのは、好立地が「収益の源泉」から「経営の重荷(ハンディキャップ)」へと変質したことです。特に都市部や医療モールにおける算定ルールは、逃げ道のないほど厳格化されています。
| 項目名 | 改定内容(令和8年) | 経営への影響・リスク |
| 集中率ルールの厳格化 | 同一建物・敷地内の複数医療機関を「1つの機関」とみなして集中率を計算。 | 医療モール内の薬局は、意図せずとも「調剤基本料2」以下へ転落するリスクが激増します。 |
| 都市部ルールの新設 | 政令指定都市・東京23区等で「500m以内に他薬局あり」かつ「月600回超・集中率85%超」で調剤基本料2(30点)へ。 | 【重要】令和8年5月末時点の既存薬局には経過措置がありますが、新規・改装時は即座に「基本料1(47点)」から脱落します。 |
| 門前立地依存減算 | 病院近隣(200床以上100m以内等)やモール内に新規開設する場合、基本料から▲15点。 | 立地プレミアムは消失しました。この15点の恒久的な減算は、後述する在宅等の「対人評価」でしか取り戻せません。 |
「基本料1(47点)」を維持できるか、「基本料2(30点)」に転落するか。
この17点の差は、薬局経営において致命的な収益格差となります。
立地に頼る「待ち」の姿勢から、専門性で稼ぐ「攻め」の姿勢への転換は、もはや生存条件なのです。
3. 【人への投資】「賃上げ」を収益に変える新評価
インフレと慢性的な薬剤師不足。
このダブルパンチを乗り越える鍵は、新設された「人への投資」への評価を使い倒すことです。
- 調剤ベースアップ評価料(新設)
薬剤師・事務職員の賃上げ原資として、令和8年度は「4点」、令和9年度は「8点」と段階的に引き上げられます。 - 調剤物価対応料(新設)
物価高騰への補填として、令和8年度は「1点」、令和9年度は「2点」が新設されます。ただし、「3ヶ月に1回に限り算定」という制約があるため、経営計画への組み込みには注意が必要です。
経営者やコンサルタントとして現場を見ている身として強調したいのは、「賃上げをコストではなく、最強の経営戦略と捉える」ということです。
- ベースアップ評価料を申請しないことは、競合他社に人材を奪われることを意味します。
- 「給与が高いから残る」のではなく、「自局の質を維持するために、国からの評価を還元する」という姿勢が、職員の帰属意識を高めます。
- 安定した人材確保こそが、次に述べる高単価な「地域支援体制加算」の算定実績を生む唯一の道です。
4. 【対物から対人・在宅へ】地域支援体制加算の劇的変化
今回の改定の目玉は、名称変更された「地域支援・医薬品供給対応体制加算」と、在宅医療への大胆なインセンティブです。
供給体制の厳格化と高単価の獲得
新加算では、「後発品調剤率85%以上」に加え、医薬品の分譲実績や「重要供給確保医薬品の1ヶ月分備蓄」が強く求められます。ハードルは高いですが、基本料1の薬局なら「59点(旧32点)」や「67点(旧40点)」といった極めて高い点数が設定されており、経営の生命線となります。
収益を爆発させる「バイオシミラー」と「在宅」
経営者が注目すべき「高収益項目」は以下の通りです。
- バイオ後続品調剤体制加算(50点): 新設されたこの高得点加算は、バイオシミラーへの積極的な切り替えを行う薬局への強力なボーナスです。
- 訪問薬剤管理医師同時指導料(150点): 医師と同時に訪問し指導することで算定。「6ヶ月に1回」の制限はありますが、立地減算(▲15点)を1回で10件分以上カバーできる破壊力があります。
- 在宅薬学総合体制加算の拡充: 施設基準により、従来の15点から30点、さらには100点(単一建物以外)へと大幅に引き上げられました。
評価体系の再編:介入の質が問われる
従来の重複投薬防止加算(20/40点)は廃止され、より積極的な介入を評価する「薬学的有害事象等防止加算」や「調剤時残薬調整加算」(各30/50点)へ組み替えられました。
これは「薬を減らす」という実利に対する報酬が手厚くなったことを意味します。
5. 【DXの必須化】医療DX推進体制整備加算のハードル
医療DXへの対応は、もはや「努力義務」ではなく、主要な加算を算定するための「入場券」となりました。
「医療DX推進体制整備加算」では、マイナ保険証利用率(令和8年5月までに最大70%目標)や、電子処方箋の受付体制、電子カルテ情報共有サービスの活用が必須条件となります。
ここで重要なのは、「電子処方箋」が新設の「薬学的有害事象等防止加算(30-50点)」などの算定要件とも密接に関わっているという点です。
10点程度のDX加算のために投資するのではなく、50点の管理料を勝ち取り、かつ業務を効率化して薬剤師を「外(在宅・地域)」へ出すための武器として、DXを位置づけてください。
6. まとめ:令和8年改定を勝ち抜くためのアクションプラン
令和8年度改定は、過去の成功体験に固執する薬局を容赦なく淘汰します。しかし、変化を受け入れる準備は今からでも間に合います。直ちに取り組むべきは、以下の4点です。
- 賃金規定の早期見直しと届出: ベースアップ評価料を確実に算定し、人材の流出を阻止する。
- 在宅シフトへの構造改革: 150点の同時指導料や100点の総合体制加算を狙い、医師・ケアマネジャーとのリレーションを再構築する。
- 供給力とバイオシミラーへの注力: 50点の新加算や59〜67点の地域支援加算を逃さないため、在庫管理と提案力を強化する。
- DX投資の断行: 電子処方箋への対応を急ぎ、高単価な管理料を算定できるインフラを整える。
立地という「外側の環境」に依存した経営は限界を迎えました。
これからは、薬剤師の専門性と地域貢献という「内側の価値」で稼ぐ時代です。
変化を恐れず、進化する覚悟を持った薬局こそが、地域の健康拠点として次の10年を勝ち抜くことができるのです。
今こそ、一緒に一歩を踏み出しましょう!
