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「国試はなんとかなる」は危険信号!薬学生が陥る“致命的な勘違い”とその対策

#勉強法#薬剤師#薬剤師国家試験

「薬剤師国家試験なんて、暗記すればなんとかなる」 「マークシート(択一式)だから、どうにかなるでしょ」

もしあなたが、心のどこかで少しでもそう思っているなら、どうかこの先を読み進めてください。その楽観的な考えが、あなたの6年間の努力を無に帰す「致命的な勘違い」かもしれません。

残念ながらここ十数年ほどで薬学生の学力が全体的に低下傾向にあることを肌で感じています。

これは単なる肌感覚ではありません。その背景には、薬学部への入学のハードルが下がっているという客観的な事実があります。

客観的データ①:深刻化する私立大学薬学部の「定員割れ」

学力低下の背景には、薬学部の人気が相対的に下がり、入学のハードルが下がっていることがあります。以前は高い競争率を勝ち抜かなければ入学できませんでしたが、現在は定員を満たせない大学が増えています。

根拠となるデータ

  • 2024年度の入学者状況: 全国の私立大学薬学部(6年制)62校のうち、半数以上の33校が定員割れを起こしている。
  • 深刻な大学の状況: 定員割れした大学のうち10校は、入学者が定員の半分にも満たない状況にある。
  • 文部科学省のデータ: 2020年度の調査でも、私立大学薬学部のうち約4割(59学部中23学部)が入学定員充足率90%以下であったと報告されている。

このデータから言えること

定員割れが起きているということは、大学側が学生を確保するために、以前よりも入学の基準を下げざるを得ない状況にあることを意味します。結果として、薬学を学ぶ上で必要な基礎学力(特に化学や生物)が十分でない学生も入学しやすくなっており、これが「薬学生全体の学力が低下している」と感じられる大きな要因となっています。


客観的データ②:横ばいが続く薬剤師国家試験の合格率

「入学しやすくなったなら、国家試験の合格率も下がっているのでは?」と考えるのが自然ですが、全体の合格率はここ数年約70%で横ばいです。

近年の薬剤師国家試験合格率の推移

  • 第110回(2025年): 68.85%
  • 第109回(2024年): 68.43%
  • 第108回(2023年): 69.00%
  • 第107回(2022年): 68.02%
  • 第106回(2021年): 68.66%

このデータから言えること

一見すると学力は維持されているように見えます。しかし、定員割れで入学時の学力層が広がっているにもかかわらず合格率が一定なのは、各大学が国家試験対策に膨大なエネルギーを注ぎ、何とか合格レベルまで引き上げている結果とも考えられます。

逆に言えば、大学の強力なサポートがなければ、合格率がさらに低下する可能性を秘めているとも解釈でき、「入学時の学力」と「卒業・国試合格に必要な学力」との間に大きなギャップが生まれている状況を示唆しています。

実際に、2024年度の入試では、全国の私立大学薬学部のうち半数以上が定員割れを起こし、中には入学者が定員の半分にも満たない大学もありました。

定員を満たすために、以前なら合格ラインに達しなかったであろう学生も入学しているのが現状です。つまり、「薬学を学ぶための基礎学力」の平均が、以前に比べて下がっている可能性は否定できません。

しかし、それに反して薬剤師国家試験の難易度は決して下がってはいません。むしろ、毎年多くの新薬が承認され、治療ガイドラインも更新され続ける中で、薬剤師に求められる知識レベルは年々高まっています。

国民の生命と健康を守るという薬剤師の使命を考えれば、国家試験のレベルを安易に下げることはできない。これは当然のことです。

ではなぜ、多くの学生が「国試は簡単だ」と勘違いしてしまうのでしょうか。

勘違いを生む2つの元凶

原因は大きく2つあると考えています。

1. 入学しやすさと、大学の定期試験の”優しさ”

かつてに比べ、薬学部への入学のハードルは下がりました。それに伴い、大学内での定期試験も、学生を卒業させるために比較的易しくなっている傾向が見られます。 これが、「この程度の勉強で単位が取れるなら、国試も大丈夫だろう」という危険な慢心を生むのです。大学の試験と国家試験は、その目的も難易度も全くの別物であることを、まず認識しなければなりません。

2. 択一式という問題形式の”罠”

そして、最大の元凶が、択一式という問題形式です。 論文式や記述式と違い、答えが選択肢として提示されているため、「何となく見たことがある」という曖昧な知識でも正解できるような気がしてしまいます。

しかし、これは大きな間違いです。 国家試験の選択肢は、出題者が「受験生がどこをどう間違えるか」を熟知した上で、巧妙に作られています。例えば、ある薬物の副作用を「なんとなく知っている」レベルで満足していた学生が、類似した副作用を持つ別の薬物とを区別させる巧妙な選択肢に引っかかってしまった、というケースは後を絶ちません。

中途半端な知識は、むしろ誤った選択肢へとあなたを誘導する罠にしかなりません。 「なんとなく知っている」レベルの記憶では、確信をもって正解を導き出すことは不可能なのです。

「ただ、がむしゃらにやる」では合格できない

この厳しい現実から目を背け、計画もなく、ただやみくもに参考書を眺めたり、問題を解いたりするだけの勉強では、合格はおぼつかないでしょう。

合格という結果を勝ち取る学生は、例外なく明確な「戦略」を持っています。

では、どうすれば良いのか。 答えは一つです。

現在地を正確に把握し、ゴールから逆算した戦略的な学習計画を立て、それを強い意志で実行すること

これに尽きます。

もし、この記事を読んでハッとしたのが、試験本番まで残り時間が少ない時期だったとしても、決して手遅れではありません。残された時間で自分に何ができるのか、何をすべきなのかを冷静に分析し、今この瞬間から計画を立て直せば良いのです。

  • 己を知る(現在地の把握):まずは模試などを受け、自分の実力を客観的に評価しましょう。どの科目が得意で、どこが苦手なのか。知識の定着度はどの程度か。
  • 敵を知る(試験の分析):次に、国家試験の出題範囲、近年の出題傾向、合格基準を徹底的に分析します。
  • 戦略を立てる(計画の立案):試験日から逆算し、「いつまでに」「何を」「どのレベルまで」到達するのか、具体的で実現可能な計画を立てます。
  • 実行する(強い意志):そして最も重要なのが、立てた計画を何があってもやり抜くという「強い意志」です。計画は立てただけでは絵に描いた餅です。日々の誘惑や不安に打ち克ち、淡々と実行し続ける覚悟が求められます。

薬剤師国家試験は、あなたの人生を左右する重要な関門です。しかし、それは決して運や才能だけで決まるものではありません。

正しい戦略と、それを支える強い意志さえあれば、必ず乗り越えることができます。

この厳しい戦いを乗り越えた先には、患者さんから信頼される薬剤師としての未来が待っています。

どうか、根拠のない楽観視や、「なんとなく」の勉強から今すぐ決別してください。 自分だけの合格戦略を練り上げ、未来の医療人としての第一歩を、その手で掴み取ってください。

皆さんの健闘を心から祈っています。

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